【書評】萱野稔人『国家とはなにか』

・最近、ニュース番組等でよく見かける人で、フリーター後にパリ大学卒業といった変わった経歴を持っていたことから、主著を一部、読了。

・前書きにある通り、4章にある著者の主張の核は国家は暴力装置であり、フーコーやアルセチュール等が述べるようなイデオロギーや幻想に基づくものではないというもの。

・確かに主義主張や思い出だけで国家が成立するとは考えにくい。異なる主義主張を持ったテロリストがいればその国家はたちまち瓦解する。

・従って暴力の独占が国家の最低条件であることは否めない。一方、暴力の独占を続ける独裁国家が永久に続いた例は歴史にはない。

・あくまで暴力の行使は最後の手段であり、民主制の導入や経済成長、文化の継承などを通じて、国家は国民を支配しているのではないか。

・その意味では、国家は暴力と幻想の連続的な運動体である。

元号について

元号を維持すべき理由は何だろうか。

①時代の句切れ目

②日本が時を支配

③日本の文化、伝統を守る

④政治的なメッセージング

⑤積極的に廃止する理由がない

 

頻繁に変わっていた中世などとは異なり、1世代以上は続いた平成と昭和が比較されるなど、一定の効果はあった模様。平成のうちに〇〇をなくそうという運動が起こるなど、合理的理由はないけど制度見直しの機運が高まり、本当に変わるのであれば結構良い気もする。

 

中国王朝や南北朝があった昔は意味があったかもしれない。建国〇〇年と評することで正統性を示すように。

 

現在では天皇や政府の正当性は憲法や選挙などによって担保されていて、それ以上の権力は不要である可能性。

 

一定の保守層には受けがよいものと思われるが、元号制度自身があるだけでは、多くの日本人からすればライフスタイルへの影響は微々たるもの。日本文化として桜や和食を挙げる人はいれども元号と答える人は聞いたことがない。

 

今回は初めて国書から引用したということで万葉集への興味が高まったものの、1世代に一回の出来事による文化波及効果は限定的。

 

今回は日本人としての一体感や1つだけの花を咲かせることの大切さ、国書からの引用ということがメッセージとして込められた。

 

在日の外国人からすればやや疎外感を覚えた人もおり、また中国等からも一定の反応があったとのこと。

 

いずれにせよ大きな政治的摩擦が起こっていない状況ではないか。

 

上記の論点においていずれも影響は軽微である一方、SNSやメディアでは面白おかしく触れられていることから、特段、廃止する理由がないのではないか。

 

何より元号自身の問題と元号見直しに伴う政治利用の問題を区別する必要があり、なかなか冷静な議論が難しいと思われる。

 

次は反対する理由を考えてみたい。

 

【書評】『ウェルビーイングの設計論』ラファエルAカルヴォ、渡辺淳司、ドミニクチェン等

  •  幸福度ランキングによれば、今年の日本はG7の中で最低の58位。
  • 幸福度は個人の問題であって、国家の問題ではないかもしれないが、国民の幸せ向上や自殺防止等は国家の責務。
  • 本書ではテクノロジーを通じたウェルビーイングの促進を目指すポジティブコンピューティングについて説明。
  • 詳細は本書に譲るが、幸福度向上に関してのテクノロジーの位置づけや幸福度データなどについて、丁寧に分析するなど、幸福学の入門書としても優れている。
  • 幸福学が如何に幸せたるかということを追及する実学であるならば、最後の章のみを読むのをお勧めする。
  • いずれにせよ、本書が述べるように「ウェルビーイングは主観的なものであって、外部から「正解はこれです」と提示することは不可能なわけで、それは自分で発見していくしかない」のだが。
ウェルビーイングの設計論-人がよりよく生きるための情報技術

ウェルビーイングの設計論-人がよりよく生きるための情報技術

  • 作者: ラファエル A.カルヴォ& ドリアン・ピーターズ,渡邊淳司,ドミニク・チェン,木村千里,北川智利,河邉隆寛,横坂拓巳,藤野正寛,村田藍子
  • 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
  • 発売日: 2017/01/24
  • メディア: 単行本
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